贈与とは、贈与者が、その財産を無償で受贈者に対して与えることを目的とする契約のことです。
贈与契約を締結したことは、贈与契約ごとに書面にしておくべきです。贈与契約は、契約書を作成せずとも当事者間の口頭による合意で有効に成立します。しかし、書面によらない贈与は、履行の終わった部分を除き、当事者は撤回することができます。また、贈与税や相続税の申告の要否に関わらず、贈与の証拠を手元に残しておくべきです。そのため、贈与契約を締結したことは、書面にしておくことをお勧めします。
なお、夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができ、取消しの効果は遡及し、履行完了後でも回復を求めることができます。つまり、書面によらない贈与の撤回よりも広範囲です。ただし、夫婦の婚姻関係が実質的に破綻している場合は、契約を取り消すことはできません。
- 贈与の種類
単純贈与 |
下記以外の贈与 |
定期贈与 |
定期的かつ継続的に一定の財産を贈与すること
例えば「毎年○万円ずつ贈与する」など |
負担付贈与 |
受贈者に一定の義務を負わせる贈与のこと
例えば「車を贈与するが、借入金の一部を負担させる」など |
死因贈与 |
贈与者の死亡に伴って一定の財産が贈与されること
例えば「私が死んだら、この土地をあげる」など |
- 贈与財産の範囲
本来の相続財産 |
不動産(土地・建物)、借地権、耕作権、現金、預貯金、有価証券、車、宝石、骨董、美術品、事業用財産、家庭用財産、ゴルフ会員権、貸付金、売掛金など |
みなし贈与財産
※贈与税の課税対象として評価 |
生命保険金(※自分で保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合)、親族間の金銭消費貸借(※無利息部分)、離婚による財産分与(※常識的な範囲を逸脱する部分)、住宅の共同購入における購入資金の負担割合と所有権登記の持分割合が異なる場合の差、債務免除益など |
非課税財産 |
@ |
会社など法人から贈与を受けた財産(※所得税) |
A |
扶養義務者間での生活費・教育費(※通常必要な範囲) |
B |
離婚による財産分与で取得した財産(※常識的な範囲) |
C |
相続開始年に被相続人から贈与を受けた財産(※相続税) |
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死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力を生じる贈与のことです。
死因贈与は、贈与者が死亡したときに贈与の目的たる財産が受贈者に移転します。また、死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます。しかし、死因贈与は「契約」であり、遺贈は「単独行為」であることから、遺贈の単独行為性に基づく規定(遺言の能力・方式、承認・放棄、包括受遺者に関する規定)は準用されません。
なお、
遺贈とは、
遺言によって、遺言者の財産を無償で贈与することをいいます。
- 遺贈と死因贈与の比較
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遺贈 |
死因贈与 |
法的性質 |
単独行為
※受贈者の承諾不要 |
契約
※受贈者の承諾必要 |
能力 |
15歳 |
18歳 |
代理 |
不可 |
可 |
方式 |
厳格に法定 |
遺贈の条文は準用されない |
執行者 |
可 |
可 |
遺留分減殺請求 |
可 |
可 |
仮登記 |
不可 |
可 |
相続税 or 贈与税 |
相続税 |
相続税 |
登録免許税 |
4/1000 or 20/1000 |
20/1000 |
仮登記:10/1000
本登記:10/1000
※平成18年4月1日以降 |
不動産取得税 |
一部課税
※相続人以外への特定遺贈 |
課税 |
- 不動産の死因贈与と登記
死因贈与契約は、贈与者の死亡を始期とする贈与契約であり、「始期付所有権移転仮登記」を申請することによって、受贈者は予め権利を保全しておくことができます。そして、死因贈与契約を締結したことは、書面にしておくべきです。さらに、書面を「当事者は、贈与物件について、受贈者のために始期付所有権移転仮登記をするものとする。贈与者は、受贈者が仮登記を申請することを承諾した。」旨の記載のある公正証書にしておけば、公正証書に基づき、受贈者が単独で仮登記を申請することができます。
また、死因贈与も遺贈と同様、執行者を指定しておくことができます。執行者の指定がない場合、受贈者は、所有権移転登記の際に贈与者の相続人全員を登記義務者として共同申請することが必要となりますが、執行者の指定をしておけば、執行者を贈与者の相続人の代理人として共同申請することができます。そして、所有権移転登記を執行者が申請する場合は、その資格を証する書面は、執行者の指定のある死因贈与契約書が公正証書であるときは公正証書のみで足りますが、私署証書のときは私署証書に押印した贈与者の印鑑証明書または贈与者の相続人全員の承諾書(印鑑証明書付)のいずれかが必要となります。
したがって、不動産を死因贈与する場合は、将来のスムーズな名義変更のため、契約書を執行者の指定のある公正証書で作成しておくことをお勧めします。